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【読書感想文】現在では当たり前の行動経済学の歴史『行動経済学の逆襲』

こんにちは。

家路を歩いているだけなのに、前を歩く女性から「え?!なんでコイツついてくるの?」という顔で振り向かれる、合同会社ほしのやのまさるです。

 

現在では、当たり前になっている行動経済学も最初は「異端」といわれていました。本書「行動経済学の逆襲」は、行動経済学が「異端」から確固たる地位を得るまでの道のりが詳しく、楽しく書いてあります。

 

 

行動経済学の逆襲

 

著者

リチャード・セイラー*1

 

 

行動経済学が提唱される以前の、伝統的な経済学は、「人間はものすごく合理的で、理性的」という前提での学問だったのです。なので、人は食べすぎたり、飲みすぎたりすることはまったくないし、ついつい夜更かしをしてしまったり、二度と食べないと決めていたチョコレートを食べてしてしまったり、やろうと思っていた部屋のそうじを先延ばしにすることは一切ない。

すばらしいです人しか存在しない。という世界観なのです。

現実はこんなすごい人はかなりの少数派なのではないでしょうか?

 

著者、リチャード・セイラーは「ほとんど存在しない人間を基準に考えても、正しく経済を読み取れるわけがない」と異を唱えたのです。現在を生きるぼくたちからしたら、そんなことは当たり前のことなのですが、やはり当初は「異端」として相手にしてもらえません。伝統的な経済学者たちから批判を浴びながらも、数々の実験で反論していきます。

 

例えば、伝統的な経済学は「インセンティブ説」というものがあって、人は利害が大きく関わるときほど真剣に考え、問題解決のために積極的に行動して意志決定をする、という仮説です。

しかし、著者は実験の結果、「選好の逆転」という現象を見つけ出します。

 

その実験は、

97%の確率で1,000円もらえる"A"

37%の確率で3,000円もらえる"B"

どちらを選ぶかを被験者に質問する、というもの。

 

ほとんどの被験者が確実性の高い"A"を選択します。そこで、さらに

「"A"も"B"も保有しているとしてそれぞれいくらで売却するか?」

と質問をします。

ほとんどの被験者が"B"に高い値段をつけたのです。

この結果は、「利害が大きく関わっていても積極的な行動をするとは限らない。」

ということを証明してます。

 

メンタル・アカウンティングや、セルフコントロールプロスペクト理論など、様々な切り口で伝統的経済学と戦っていきます。

 

「異端」からノーベル賞受賞するほどに認められるまでの奮闘っぷりに引き込まれますし、ちょいちょい笑わせられます。

正しいと思ったことは、たとえ少数派でも、主張し続けること、行動し続けることの勇気がもらえる一冊です。

 

 

 

目次はこんな感じです。

 

第1部 エコンの経済学に疑問を抱く 1970年〜78年

第2部 メンタル・アカウンティングで行動を読み解く 1979年〜85年

第3部 セルフコントロール問題に取り組む 1975年〜88年

第4部 カーネマンの研究所に入り浸る 1984年〜85年

第5部 経済学者と闘う 1986年〜94年

第6部 効率的市場仮説に抗う 1983年〜2003年

第7部 シカゴ大学に赴任する 1995年〜現在

第8部 意思決定をナッジする 2004年〜現在

 

 

ありがとうございました。

行動経済学の逆襲

行動経済学の逆襲

 

 

*1:2017年ノーベル経済学賞受賞者。シカゴ大学ブース・スクール・オブ・ビジネス教授、同校意思決定研究センター理事。行動科学と経済学を専門とし、行動経済学のパイオニアの一人に教えられる。正しい行動を促す概念として提唱した「ナッジ」は一世を風靡し、日本を含む各国政府の政策に取り入れられている。2015年にはアメリカ経済学会会長を務めた。『行動経済学の逆襲』はエコノミスト紙やフィナンシャル・タイムズ紙の年間ベストブックに選出されるなど高い評価を得る