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【書籍要約】これからの「正義」の話をしよう|いまを生き延びるための哲学

こんにちは。

アイスコーヒーを注文したのにホットコーヒーが出てきても何も言えない

合同会社ほしのやのまさるです。

 

「正義」とはなにか?

あまり考えたことはないし、パッと思いつきません。なかなか重いテーマです。少し考えてみても、「燃えるゴミの日に燃えないゴミは絶対に出さない!」くらいの薄っぺらい、発表したことを後悔するような「正義」しか思いつきませんでしたが、本書の扱う「正義」はもちろん、こんなどうでもいいことではありません。

ハーバード大学の教授である著者の大人気講義「Justice(正義)」をもとにした本書は、ぼくたちが求めるべき正義とはなにか。それをどのように政治に活かせばいいのか。稀代の哲学者がぼくたちの道徳観や、倫理観に問いかけてきます。

 

これからの「正義」の話をしよう ──いまを生き延びるための哲学 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

著者

マイケル・サンデル*1

 

 

われわれが自らの正義について考えるには、自分のアイデンティティが結びついたコミュニティの善について考える必要がある。われわれの正義はとても脆く、あいまいなものなのだから。

 

正義の意味を探るアプローチは3つある。

①幸福の最大化

②自由の尊重

③美徳の促進

 

「①幸福の最大化」という考え方はジェレミーベンサム*2

が確立した功利主義のことで、中心概念は、「道徳の至高の原理は幸福。苦痛に対する快楽の割合を最大化することだ」というもの。

 

しかし、功利主義(幸福の最大化)の弱みの1つは、個人の権利を尊重しないことだ。幸福の総和を重視するため、少数派の個人をないがしろにしてしまう。

例えば、

1884年、4人のイギリス人の船乗りが乗っていた船が嵐に遭遇して沈没してしまった。4人は救命ボートで脱出したが、助かったのは3人だった。犠牲になった1人はどういう死に方をしたのか?

 

助かった3人に食べられたのである。

 

生き延びた3人はイギリスに戻ってから逮捕されるが、だが、もし1人を犠牲にしなければ、4人とも餓死していたのである。

功利主義の観点、幸福の総和の最大化の観点からいえば、4人犠牲になるよりも1人だけが犠牲になる方が望ましいことなのだ。

 

「②自由の尊重」自由至上主義の観点からの正義は”どの人間も自由への基本的権利を有している”というもの。制約のない市場を支持し、

  • 安全のためシートベルト着用を義務づける法律
  • 売春や同性愛の禁止
  • 所得や富の再配分

を拒否する。という考え方だ。シートベルトをつけようが、売春しようが、法外に儲けようが、それこそが自由だ!それこそが正義だ!!という主張である。

 

自由の尊重は少数派の意見も大切にあつかう。

しかし、自由至上主義を突きつめていくと、臓器の売買や、自殺したい人の手助け(自殺ほう助)、マスクの需要に対して在庫が少なかったら通常価格より法外に高い価格で販売する。

というようなことこそが正義。ということになってしまう。

 

「③美徳の促進」は、われわれは家族や同胞がたがいに負う特別な責任、仲間との連帯、コミュニティや国への忠誠、愛国心、誇りと恥、こうした連帯の要求なくして、生きることや人生の意味を理解することはできない。

 

「正義」は所属するコミュニティの影響を多分に受けるので、コミュニティの共通の正義、共通の善とはになかを、政治的・道徳的・宗教的な部分もふまえて話し合って決めるべきだ。

もちろん、カンタンなことではないが、難しいからといって議論をやめてしまうのは思考停止だ。

 

この美徳の促進をしていくのが正義、というのが著者の主張である。

 

本書の結論は、「われわれの正義はとても脆く、あいまいなものなのだから、われわれにとって共通の正義とはなにか?なにが共通の善か?を常に考え、議論をし続けることが大切」というこである。

 

 

 

 アリストテレス*3からカント*4ロールズ*5といった古今の哲学者の主張の欠陥を著者は指摘しています。そのあたりは、ぜひ本書を手に取って確認して頂きたいです。

*1:1953年生まれ。ハーバード大学教授。専門は政治哲学。ブランダイス大学を卒業後、オックスフォード大学にて博士号取得。2002年から2005年にかけて大統領生命倫理評議会委員。1980年代のリベラル‐コミュニタリアン論争で脚光を浴びて以来、コミュニタリアニズムの代表的論者として知られる。類まれなる講義の名手としても著名(刊行時)

*2:イギリスの哲学者・経済学者・法学者。功利主義創始者として有名(1748年2月15日 - 1832年6月6日)

*3:古代ギリシアの哲学者。 プラトンの弟子であり、ソクラテスプラトンとともに、しばしば西洋最大の哲学者の一人とされる。

*4:プロイセン王国の哲学者であり、ケーニヒスベルク大学の哲学教授。『純粋理性批判』、『実践理性批判』、『判断力批判』の三批判書を発表し、批判哲学を提唱して、認識論における、いわゆる「コペルニクス的転回」をもたらした。フィヒテシェリング、そしてヘーゲルへと続くドイツ古典主義哲学の祖とされる。

*5:アメリカ合衆国の哲学者。主に倫理学、政治哲学の分野で功績を残し、リベラリズムと社会契約の再興に大きな影響を与えた。