TOEIC L&R TEST: 900点超えへの道

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【書籍要約】地球の履歴書|サイエンティストによる「地球史」

むかし、むかし、大むかし。45億7000万年前にわれらが地球は誕生した。地球史を1年に例えると、恐竜が闊歩していた白亜紀ですら12月20日らしい。白亜紀は6億年前だ。全く実感のわかない大むかし驚きの事実、現代の自然現象にどう繋がっているのかがわかるようになる。

 

地球の履歴書 (新潮選書)

著者

大河内直彦*1

地球

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地球が誕生したのは45億7000万年前という、太古の昔だ。それでも宇宙の誕生からは92億年後になる。宇宙は約138億年に誕生している。

誕生したばかりの地球は隕石や小惑星と衝突を繰り返していた。その熱エネルギーで地球の表面は超高温。岩をも溶かすほどのドロドロの塊だった。

地球誕生から約4000万年後に火星くらいの大きさの「ティア*2」という惑星が地球に衝突する。巨大な物体同士の衝突で周囲にはおびただしい破片が飛び散った。

 

ティアの衝突から数十年後に破片が一つにまとまって「月」ができる。時はたちティアの衝突の余韻もなくなってくると地球の温度はゆっくりと下がり始める。その中で金属成分が集まって中心に向かって沈んでいった。これが「コア」と呼ばれる部分だ。さらにケイ素やマグネシウムをたっぷり含んだ物質が沈殿し始める。これが「マントル」。そのほかの融け残っていた物質が固化して「地殻」となった。

さらに地球の温度が下がり大気中にあった水蒸気が雨が降るようになる。それが「海」になる。当初の海はまだ塩辛くもなく、魚もいない状態だ。

ここまでに約5億7000万年の時間を要している。約40億年前だ。

海洋観測

地中海の真珠、アレクサンドリアでは古代ヘレニズム文化*3が花開く。紀元前300年に人類は計算によって地球のサイズをほぼ誤差なく割り出していたし、アリスタルコスが「地動説」を提唱したりしていた。コベルニクスが登場する、約1800年も前の話である。この素晴らしい「知」も紀元前1世紀に悪夢を迎える。ローマ人、アラブ人に侵略されて、書物は焼かれ、建物は灰じんとなってしまう。人類は15世紀になってもまだこの時のよりも正確に地球のサイズを測れなかったし、「地動説」も提唱されなかった。約1800年間この分野の「知」は全く成長していなかったのだ。「巨人の肩の上に立つ」ことがいかに大切か思い知らされる。

海の深さを測る歴史

海の底は目視できない。人間が素潜りできるのはせいぜい数十メートルだ。我々人類が海の広さ、深さを正確に知ったのは約200年くらい前だが、そこに至るまで人類は、太古の昔から海の深さを知ろうと試行錯誤してきたのである。

麻ひもにおもりをつけたもの

紀元前19世紀にはひもの先におもりをつけたものや長い竿を船上から海中におろして深さを図っていたようだ。古代エジブトの墓の壁画にこの様子が描かれている。ヘレニズム文化の巨人はここでも偉大な足跡を残している。紀元前1世紀頃のイタリアで付近で1800メートルの水深を計測したと伝えられている。この記録は1900年の間、破られることはなかった。

この頃「青銅鐘」と呼ばれるガラス玉のような、青銅製の潜水艦も発明されている。最初の潜水挑戦者はアレキサンダー大王だといわれる。アレキサンダー大王が海底に到達したという記録はないが、

 

  世界は呪われ、地獄に落ちた。大きくて強い魚が、小さな魚をむさぼり食べている。

 

という言葉を残している。

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ソナーの登場

20世紀に入るまでは原始的な方法で行ってきた海洋観測だが、「ソナー」なるものが開発された。ソナーとは、音波を海底に向けて発信し、それが海底からはね返ってくるまでの時間を測って、海の深さを測定する危機である。やまびこと同じ要領の装置だ。空気よりも水中の方が音は伝わりやすく、水中は空気中の約5倍の速度だ。

ソナーが発明されたのは、氷山に激突して1500人の乗員とともに海の藻屑となったタイタニック号の事故を受けて音波を用いて遠くにある氷山を見つけようとしていたところ、海の底からも音が帰ってくることに気づいたからである。

ソナーの観測方法はイヤホンをつけた観測員が、海底からはね返ってくる音をマニュアルで測定するというやり方で、かなりアナログなやり方だった。観測も1点1点する必要があるので時間もかかった。だが、地球の表面も、月のようにあばただらけだということ、賛否両論ではあったが、「プレートというものがあるのではないか?」という議論がされるようになった。

サイドスキャナーソナー、シービームの登場

1980年代に入ると「サイドスキャン・ソナー」と「シー・ビーム」がほぼ同時に現れる。

サイドスキャン・ソナーは*4船の後方に取り付け曳航して使用する。サイドスキャン・ソナーから扇型に広がる音波が海底に向かって発信する。この技術により海底を写真でも取るかのように把握できる。

シー・ビームも音波を使って海底を測定する。サイドスキャン・ソナーよりも指向性の強い多数の音波ビームが船底から海底に向けて扇型に発信できる。航路に沿った幅数キロメートルの海底について詳細な地形図を一気に描くことができる。

サイドスキャン・ソナーもシー・ビームも今までとは比べ物にならない大量のデータを取り込む。その高速データ処理に耐えうるコンピュータ技術の進歩も忘れてはならない。

これらの技術進歩により、海底は急峻な山や何千メートルもある断崖絶壁なども確認できるようになる。賛否両論だったプレートの存在も、疑う者はいなくなった。

トレジャーハンティング

海底を可視化する技術は科学者以外の世界でもしばし、用いられるようになった。それは沈没船探しである。タイタニック戦艦武蔵戦艦大和…。沈没船は枚挙にいとまがない。1985年にはカナダ・ニューファンドランド沖の海底で海洋地質学者ローバート・バラードが海底に横たわるタイタニック号を発見している。

2007年にはアメリカの企業、オデッセイ・マリーン・エクスプロレーション社がスペイン軍の沈没船、「ヌエストラ・セニャーラ・デ・ラ・メルセデス号」から17トンの銀貨を引き上げ、銀貨には400億円という値段がついた。さすがにスペイン政府も黙ってはおらず、オデッセイ社と裁判になり、銀貨はスペインの国家財産ということで落ち着いた。

さらにオデッセイ社は2016年には61トンの銀をアイルランド沖の海底に横たわる難破船から引き上げたものだ。この船は1941年にドイツ軍に沈められた英国の貨物船「ゲアソッパ号」だ。8割が同社の取り分という協定を英国政府と結んだ上でのトレジャーハンティングだった。

船が沈没する理由

  • 氷山に衝突
  • 嵐による遭難
  • 戦争による撃沈
  • 船同士の衝突
  • 廃棄処分

読み終えて

我が国の近海にもたくさんの沈没船があるはずなのでトレジャーハンティングプロジェクトが立ち上がったりするのかな?科学の進歩には技術の進歩のがものすごく重要だということがわかった。”地震の前兆と予知”や”ニオス湖の悲劇”など現代の地球の話も舌を巻くものばかり。地球は不思議だ。

 

地球の履歴書 (新潮選書)

地球の履歴書 (新潮選書)

 

 

*1:1966(昭和41)年、京都市生まれ。海洋研究開発機構生物地球化学研究分野・分野長。東京大学大学院博士課程修了。京都大学北海道大学、米国ウッズホール海洋研究所などを経て、現職。著書に『チェンジング・ブルー―気候変動の謎に迫る』(岩波現代文庫講談社科学出版賞受賞)などがある(刊行時)

*2:ギリシャ神話における月の神セレネの母親の名前

*3:東方文化との融合から超民族的普遍的性格を持つようになったギリシャ文化。アレクサンドロス大王の東征からプトレマイオス朝の滅亡までの約300年間の間の時代をさし、地理的にはギリシャマケドニアを中心にアレクサンドロスの東征地域に形成された。

*4:サイドスキャン・ソナーは1950年代にはアメリカ在住のドイツ人技師により編み出されてはいたが、軍にとって有用と見たアメリカ海軍はその技術を隠した。